育成費(Training compensation) |

《 目 次 》 |
① 『育成費』の概要・定義 |
② 『育成報酬金額』 |
③ 具体的なケースをシュミレーションしてみよう |
④ ローカルルールを採用する日本 |
⑤ まとめ |
① 『育成費』の概要・定義 |

FIFAの規約上、『育成費(Training Compensation)』は以下のように定義されています。 ❶『育成費(Training compensation)』 は、当該選手が初めてプロ契約を結んだ際(①)、更には、23歳の誕生日を迎えるシーズンまでの間に国際間移籍が行われた場合はその都度(②)、育成に携わったクラブに支払われるものとする。 ❷ 『育成費』を受け取る資格のあるクラブは、上述の①のケースの場合は、12歳になるシーズンから21歳になるシーズンの10年間に育成・教育に関わったクラブ、②の場合は、その移籍の直前に所属していたクラブのみが対象となる。 ❸『育成費』を支払うのは、上述の①の場合は初めてプロ契約を結んだクラブ、②の場合は移籍先のクラブ。 |
② 『育成報酬金額』 |

FIFAの規約上、『育成費(Training Compensation)』の金額の計算は以下のように定義されています。
❷ FIFAは、毎年上述の❶のカテゴリー毎に「育成報酬金額」を制定する。 ❸ 受け取る資格を持つクラブの育成費は、上記❶❷によって定められた「カテゴリー」や「育成報酬金額」に基づき、また、所属した年数に応じて算出されて行く。 ❹ 「育成報酬額」は、基本的に移籍先のクラブの基準値が採用される ❺ 『育成費』を受け取る資格を持つ12歳から21歳の間の10年間に関わったクラブの内、12〜15歳の4年間に関わったクラブは、「カテゴリー4」として扱われる。 |
大陸連盟 | カテゴリー 1 | カテゴリー2 | カテゴリー3 | カテゴリー4 |
AFC | USD 40,000 | USD 10,000 | USD 2,000 | |
アジアサッカー連盟 | 428万円 | 107万円 | 21万円 | |
CAF | USD 30,000 | USD 10,000 | USD 2,000 | |
アフリカサッカー連盟 | 321万円 | 107万円 | 21万円 | |
CONCACAF | USD 40,000 | USD 10,000 | USD 2,000 | |
北中米カリブ海サッカー連盟 | 428万円 | 107万円 | 21万円 | |
CONMEBOL | USD 50,000 | USD 30,000 | USD 10,000 | USD 2,000 |
南米サッカー連盟 | 535万円 | 321万円 | 107万円 | 21万円 |
OFC | USD 30,000 | USD 10,000 | USD 2,000 | |
オセアニアサッカー連盟 | 321万円 | 107万円 | 21万円 | |
UEFA | EURO 90,000 | EURO 60,000 | EURO 30,000 | EURO 10,000 |
ヨーロッパサッカー連盟 | 1,143万円 | 762万円 | 381万円 | 127万円 |
③ 具体的なケースをシュミレーションしてみよう |

ケース① |
12歳 浅羽FCジュニア 13〜15歳 K.Z. ヴェルメリオ JY 16〜18歳 FC川越南ユース 19歳〜 FCバルセロナ(スペイン)(初めてのプロ契約) |
FCバルセロナ(育成報酬金額 UEFAカテゴリー1)より以下の金額が各クラブに支払われる → 浅羽FCジュニア 127万円 (UEFA カテゴリー4 x 1年在籍) → K.Z. ヴェルメリオ JY 381万円 (UEFA カテゴリー4 x 3年在籍) → FC川越南ユース 3,429万円 (UEFA カテゴリー1 x 3年在籍) |
ケース② |
12歳 東京ヴェルディジュニア 13〜15歳 東京ヴェルディジュニアユース 16〜18歳 東京ヴェルディユース 19歳〜 レアル・サラゴサ(スペイン2部)(初のプロ契約) |
レアル・サラゴサ(育成報酬金額 UEFAカテゴリー2)より以下の金額が東京ヴェルディ育成部に支払われる → 合計額 2,794万円 東京Vジュニア 127万円 (UEFA カテゴリー4 x 1年在籍) 東京Vジュニアユース 381万円 (UEFA カテゴリー4 x 3年在籍) 東京Vユース 2,286万円 (UEFA カテゴリー2 x 3年在籍) |
ケース③ |
12歳 柏レイソルジュニア 13〜15歳 柏レイソルジュニアユース 16〜18歳 前橋育英高校サッカー部 19〜22歳 明治大学サッカー部 23歳〜 ニュルンベルク(ドイツ2部)(初のプロ契約) |
ニュルンベルク(育成報酬金額 UEFAカテゴリー2)より以下の金額が下記クラブに支払われる → 柏レイソルジュニア 127万円 → 柏レイソルジュニアユース 381万円 → 前橋育英高校サッカー部 2,286万円 → 明治大学サッカー部 2,286万円(21歳までの3年間が対象) |
ケース④ |
12歳 バオムFC川崎 13〜15歳 前橋FC ジュニアユース 16〜18歳 作陽高校サッカー部 19〜21歳 レバンテU.D. Bチーム(スペイン3部)(初のプロ契約) 22歳〜 ビジャレアル(スペイン1部) |
レバンテU.D.(育成報酬金額 UEFAカテゴリー3)より以下の金額が各クラブに支払われる → バオムFC川崎 127万円 → 前橋FCジュニアユース 381万円 → 作陽高校サッカー部 1,143万円 一方、ビジャレアルCF(UEFA カテゴリー1)より、レバンテU.D.に対し、以下の金額が支払われる → レバンテU.D. 3,429万円(21歳までの3年間が対象) ※これはあくまでも『育成費』に限定した話で、その他、レバンテとの契約が残っている状態での移籍となった場合、更にビジャレアルよりレバンテに対し、『移籍金(契約解除金)』が支払われる可能性があります。 |
・不当な契約解除等があった場合
・カテゴリー4への移籍
・アマチュア選手となった場合
④ ローカルルールを採用する日本 |

JFA(日本サッカー協会)『トレーニング費用制度』 | ||||
J1 | J2 | J3 | JFL | |
大学 | 120万 | 80万 | 20万 | 20万 |
高校(ユース) | 45万 / 90万 | 30万 / 60万 | 15万 | 15万 |
中学(ジュニアユース) | 30万 | 15万 | 0 | 0 |
小学(ジュニア) | 10万 | 5万 | 0 | 0 |
✅2018年度までは、日本ではジュニア(小学生)とジュニアユース(中学生)の年代を指導していたクラブには、『育成費』は対象外とされていたんだ。そう考えると、少しだけ世界に近づいたと言えるね。
⑤ まとめ |

✅ 育成の世界には、『育成費』と言う成果報酬的に報われる制度がある |
✅ 世界(FIFA)のルールと、日本国内(JFA)のルールは異なる |
『育成費』の仕組みは、そうした“育成”に重要性が置かれた素晴らしい制度であり、育成に関わる人たちにとって一つのモチベーションになり得ます。特に、フットボール界の”頂点”は、やはりヨーロッパにある訳で、そのトップレベルへ選手を送り出す事が出来れば、元所属クラブにとっては大いなるメリットがあり、夢があります。
日本から、より多くの素晴らしい選手がどんどん輩出される事を願うばかりです!